Feel Recordsでは、ゲストのためのレコードのリスニング空間、ウェルカムラウンジとリスニングルームが用意されています。田中さんには、オーディオシステムを監修いただきましたが、それぞれの部屋にセットアップされたオーディオの紹介と、その特徴を教えてください。
ウェルカムラウンジは、会話を楽しむ場として設けてあります。そのため音楽は、談笑の邪魔にならないBGMとして流れます。そこで小さな音でも豊かに鳴り、見た目にもスタイリッシュな機器を選びました。
イタリアのソリッドスティール社のオーディオラックとスピーカースタンドもそれに大きく寄与しています。
【ウェルカムラウンジのオーディオシステム】
- レコードプレーヤー:ラヴワークスサウンド テクニクスSL-1100カスタム
- プリメインアンプ:マランツ PM8006
- スピーカー:モニターオーディオ Radius Series 90
リスニングルームのシステムは2つあります。奥のシステムはマッキントッシュのアンプとJBLの大型スピーカーを中心に組んでいます。といっても、JICOはこれらの機器をすでに社内で所有していましたので、私はそれ以外の機器を選んでセットしただけです。
アンプ、スピーカーともに1980年代の米国製ですので、この時代特有の豪快なアメリカン・サウンドの再現を目指しています。
【リスニングルームのオーディオシステム 1】
- レコードプレーヤー:ガラード 301
- フォノイコライザー:オーロラサウンド VIDA II
- プリアンプ:マッキントッシュ C29
- メインアンプ:マッキントッシュ MC2500
- スピーカー:JBL 4343
部屋に入って手前側にあるシステムは、1950〜60年代に劇場などで使われたスピーカーA7が主役です。JBLとはまた異なってヴィンテージな温かい雰囲気があるトーンです。アンプも古いものにしてしまうと、音は懐古調になりがちですので、日本を代表する真空管アンプメーカーであるトライオードの現代的なモデルを選びました。
【リスニングルームのオーディオシステム 2】
- レコードプレーヤー:トーレンス TD520RW
- プリメインアンプ:トライオード MUSASHI
- スピーカー:アルテックA7
ウェルカムラウンジとリスニングルームのオーディオシステムは、どのようなコンセプトでセットアップされたのでしょうか?
ウェルカムラウンジはゲストがリスニングルームへ入る前に、カフェにいるかのようにリラックスする部屋です。小さくまとめて聴き疲れのないシステムとしました。
その一方で、リスニングルームではリスナーが音楽の世界に没入して欲しいと思っています。訴求力の強いシステムを組んでいます。
オーディオのセレクトやセットアップにおいて、大切にされたことや、気を配られたことを教えてください。
個人のリスニングルームではないので、特定の音楽ジャンルが図抜けて良く聴こえたり、あるいはうまく鳴らなかったりすることは好ましくありません。全体の音質的なバランスに留意しました。
またリスニングルームは広い部屋ですので、その空間を音楽で埋めることができるボリューム感が必要ですし、シックな雰囲気に合ったデザインにも気にかけました。
実際にウェルカムラウンジとリスニングルームでレコードを聴いてみて、音の印象はいかがですか?
セットした瞬間にうまく鳴るほどオーディオは簡単ではありません。ですが想像していた以上に良好でした。大型スピーカーらしいスケール感があると思います。しかし、まだスタート地点に立っただけに過ぎませんので、これから毎日鳴らしながらチューニングを進め、さらにJICOのカラーを打ち出して欲しいと思います。
田中さんが感じる、Feel Recordsの特徴や優位性をお聞かせください。
レコードを聴くことは基本的にインドアな趣味です。Feel Recordsは、旅行に出かけよう、日常とは異なる空間でレコードを聴こうといった、オープンな考え方が骨子になっています。とても画期的だと思います。
Feel Recordsに寄せる期待を教えてください。
Feel Records体験がきっかけになって、レコードを聴く人、オーディオを楽しむ人がさらに増えることを心から願っています。
田中伊佐資(音楽・レコードライター)
音楽雑誌の編集者を経てフリーライターに。現在「ステレオ」、「オーディオアクセサリー」、「analog」などに連載中。音楽、オーディオ、レコードをテーマとする著作多数。