音楽デュオ「融解(もくぞう)建築」によるライブと、漆芸作家・貫名 渚の作品が響き合うイベント『嚶鳴の午後』を皮切りに、京都国際写真祭のサテライトイベント『KG+』の展示をはじめ、数々のアーティストによる個展を開催してきた「ギャラリーにかい」。
2026年を締めくくる個展として、12月1日より小林太郎個展『ディグる』を開催します。「レイヤー」と「センス」をテーマに制作を続ける小林太郎。ここでは、アーティストのバックグラウンドを紐解きながら、作品に込めた思いや、個展『ディグる』の見どころについてお話を伺いました。
知覚を揺さぶり、「センス」を問い直す
自己紹介をお願いします。
京都を拠点に活動している小林太郎です。「レイヤー」と「センス」を主題に制作しています。情報は、多層的なレイヤーを通して深みを持ちます。一方で、その過程で生じるノイズ、すなわち情報のずれが、その一義性を曖昧にし、解釈の幅を生み出すと考えています。
作品を通じて、鑑賞者の視覚情報をあえて混濁させることで、知覚や判断を方向づける感性、すなわち「センス」を問い直しています。こちらから提示する情報をあえて複雑化することで、選択や再構成につきまとう「センス」を表現しようとしています。
絵を描き始めたきっかけを聞かせてください。
子供の頃から絵を描くことが好きでした。小学生の頃は漫画家に憧れ、漫画を描き始めました。
中学生の頃、地元のアトリエに通うようになり、作品制作を始めました。そこで、自分の頭の中にあるイメージをアウトプットすることの楽しさに出会い、高校生のときに初めて個展を開いたことをきっかけに、アーティストの道に進むことを決めました。

影響を受けたアーティストや作品を教えてください。
中学生の頃、初めて作品として認識したのが、具体美術協会に所属していた村上三郎の「通過」という作品でした。高校生の頃はシュルレアリスムに惹かれ、サルバドール・ダリやルネ・マグリットの作品を参考にしていました。
現在は、グラフィティのアーティストや、Instagramで目にする現代のアーティストたちの作品を追っています。また、国内のギャラリーや美術館にも足を運び、制作の手法や発想のきっかけを探しています。
作品で表現しているものは何ですか?
シリーズによって詳細は異なりますが、全体を通して表現していることは「情報」です。「memorial structure」シリーズでは「情報の死骸」を、「spray composition」シリーズでは「情報の空間」を表現しています。
他にも、キャラクターや時間、記憶などに含まれる「情報」を幅広く表現することに努めています。
ストロークが映し出す、個と集団の関係性
ギャラリーにかいで開催する個展のコンセプトを教えてください。
今回の個展のタイトルは『ディグる』です。もともとはDJの用語として使われていた言葉ですが、現在は他分野でも広く浸透しています。
展示する「spray composition」シリーズでは、社会の中に蓄積され、情報空間を形成するストロークを抜き出し、その癖や特徴に目を向けることを試みています。この行為性と会場の特性を掛け合わせることで、今回の個展のコンセプトを構成しています。

今回の個展では、どんな作品が展示されますか?
今回の個展では、「spray composition」シリーズを展示します。このシリーズでは、「情報の空間」をテーマに、スプレーによるストロークを情報の最小単位として扱っています。
画面内では、ストロークの集積によって現れる情報の空間を描いています。一方、画面の外側にあたる側面では、その集団に属さない黒色のストロークが、独立した形を保っています。一本一本のストロークには異なる形状や癖が存在していますが、それらが集合することによって個々の差異が認識されにくくなり、一つの均質な情報空間へと変化しています。
これは社会の構図を簡略化して描いたものであると考えています。一個人には癖や特徴があるにもかかわらず、集団や社会といった枠組みの中では、その個性が見えにくくなり、全体を構成する一部になってしまう。そのような関係性を表現しています。
小林さんにとって、表現とは?
僕にとっての表現とは、「きっかけ」だと考えています。
正解や不正解はなく、比較することもできない純粋な感情や現象を形として作り出す。そこに「リアクション」が生まれることが、表現するということだと考えています。そのリアクションは個人単位であったり世界単位であったりと、大きさに違いはありますが、感情や社会を変える「きっかけ」になるものが表現であると考えています。

小林太郎 個展『ディグる』
会期:2026年12月1日(火)〜12月13日(日)
※休廊日:12月7日(月)
10:00〜18:00
※最終日のみ17:00閉廊
入場無料
小林太郎 Instagram:https://www.instagram.com/teadrmotagram/