素人から始めたこだわりのレコード店「SORC」

「Feel Records 京都はなれ」では、音楽を愛する棚主が厳選した”シェアレコード”の販売を行っています。シェアレコードとは、店内に複数のレコード屋さんが出店しているようなスタイルで、棚ごとに異なるオーナーのレコードが並びます。

多彩なジャンルが取り揃えられたシェアレコードの中で、ロックを中心としたこだわりのセレクトが目を惹く、名古屋市のレコード店 SORC(Space of Rock Classic)。全くの素人からレコード店を始めたというオーナーの小畑久美子さんに、開店に至った経緯やレコードの魅力について伺ってみました。

SORCで取り扱われているレコードのジャンル構成を教えてください。

60〜70年代の英米ロックを中心に、サイケデリック、フォーク、プログレッシブ、シンガーソングライターが主な取り扱いジャンルです。オリジナルやそれに近いもの、ちょっとレアなものを集めたいと思っています。

レコードは中古と新品のどちらも取り扱われているのですか?

ほぼ中古です。新品もありますが、それらは一度市場に出たもので、いわゆる新古品という扱いになりますね。インディーズについては、ミュージシャンにより直接持ち込まれたものもあります。個人店ですので、流通に左右されることなく、好きなものだけ置いていたいという思いから、中古をメインに取り扱っています。

お店はいつ頃オープンされたのですか?

名古屋の実店舗は2009年7月にオープンしました。この夏で15周年です!その前に10年ほど、東京で通販専門店の運営を行なっていました。

15周年おめでとうございます!SORCをオープンされた背景を教えてください。

自身で商売を始めたいと思った時に、コレクターである夫が自分のレコードをお店へ売ったり、委託販売している様子を見て、「これは面白いかも!」と思ったのがきっかけです。当初は通販専門で運営していましたが、個人的な事情で名古屋に移転することになり、そのタイミングで一度やってみたかった「実店舗」に挑戦し、今に至っています。

レコード店のオーナーと言えば、「音楽好きが高じて」というパターンが多いかもしれませんが、全くの素人から始めたお店なので、今でもお客さまに教えていただくことが沢山あります。

素人からレコード店を始めるのは大変だったかと思います。音楽やレコードの知識はどのようにして得られたのですか?

『レコード・コレクター・ドリームス』という本の著者でコレクターのハンス・ポコラさんという方がいるのですが、ウィーンのご自宅に押しかけたことがあります。当初はレコード店の運営はぼんやりとしたものでしたが、この出会いが決定的でした。「これは楽しいかも!」と閃いたような感覚です。

私自身はそれまでメジャー音楽しか聴いてこなかったわけですが、「こんなに良い音楽をマニアだけのものにしていてはもったいない!」とも思いました。ポコラさんには教えていただくことも多く、困った時はいつも頼っていました。その後も、多くの出会いをいただき、足を向けて寝ることができない『師匠』もいます。

国内にはたくさんのレコード店がありますが、他とは異なるSORCの特色はありますか?

海外のレコード店のようにオープンで、お客さま同士も交流しているお店への憧れがありました。そういったお店を目標に、誰でも気軽にお立ち寄りいただける、ちょっとシャレた明るいお店にしたいというこだわりは大切にしています。

私自身が、あまり多くのジャンルに精通していないので、取り扱うレコードは限られています。そう考えると、ジャンルの幅が狭いのも特徴のひとつかもしれませんね。

古着の販売も行われていますよね?

レコード店を始めたのも思いつきみたいなところがありましたが、古着も同じような感覚です。古着好きのスタッフが居たので、面白いからやってみようかという運びになりました。始めてみると、中古レコードと古着は親和性もあり、似ているところもあるなと感じます。イギリスの古着を中心に、単なるセカンドハンドではなく、ちょっと尖った個性的なものや、オリジナルに近いヴィンテージも取り扱っていきたいと思っています。

お店にはどのようなお客さんがいらっしゃいますか?

開店当初はマニアのお客さまが中心で、通販も含めて40~60代の男性が90%以上だったと思います。ですが、アナログをリリースするアーティストが増えた影響で、10代や20代でもアナログ・レコードをご存じなんですよね。彼らの少し上の世代よりアナログが身近になっているのではないでしょうか。配信が一般的になり、メディアに関わらず音楽を楽しむ環境が増えたことで、『アナログ』に対する敷居を下げているように思います。

ご両親はCD世代ですが、ご自身はアナログに興味があるという若い方も増えていて、おじいちゃんとお孫さんが一緒にディープパープルをお求めになられたりする様子はとても微笑ましいですね。

棚主としてレコードを出品されていますが、シェアレコードというスタイルについては、どのように感じられましたか?

あるようでなかった販売スタイルだと思います。名古屋の店舗にお越しいただけない関西圏の方や、観光で京都を訪れる方にも当店を知っていただく良い機会になれば嬉しいですね。

SORCの棚には、どのようなレコードが出品されていますか?

当店のジャンルの幅狭さを感じてもらえるような70年代のフォークやプログレを中心にセレクトしました。その中でも、「他の棚主さんが取り扱わないかな」と思うものを選びました。また、高額ではなくても「ちょっとイイ」ものをお預けしたつもりです。

最後に小畑さんが感じるレコードの魅力を教えてください。

一般的に形ある物は、古いよりも新しい方が好まれる傾向にありますが、レコードは逆だと思っています。私の場合、なぜか古いものの方が圧倒的に良く感じてしまいます。例えばリマスターされたレコードよりもオリジナルの方が良く聴こえるのが不思議で、楽しいところでもあります。一度オリジナル盤を聴いてしまうと、「今まで何を聴いていたのだろう」と眩暈がするくらいです(笑)。そしてそれを知ると、どんどん良い音で聴きたくなってくる…

これを人は”沼”と言いますが、これこそが『レコードの魅力』ではないでしょうか。レコード沼にはまらなくても、その魅力を多くの方に知っていただきたいとも思っています。

ぜひ当店へ、またFeel Records 京都へ足をお運びいただき、レコードの魅力を体感してください!

SORC ウェブサイト:https://www.sorc.co.jp/cwr.html