時間を内包する絵画|戸上真音個展「Nachklang」

Feel Records 京都はなれ店のアートスペース「ギャラリーにかい」にて、2026年7月15日から開催される、戸上真音(とがみ まお)個展「Nachklang」。

パステルカラーを塗り重ね、キャンバス上を漂うように描かれる彼女の作品は、見る人の感性を刺激する、幻想的な世界観を表現しています。一見すると抽象的な作品を通して、彼女は何を表現し、伝えようとしているのでしょうか?個展開催に寄せて行ったインタビューを通して、彼女の思考に迫ります。

アーティスト戸上真音を形作るもの

自己紹介をお願いします。

戸上真音です。京都芸術大学大学院 油画領域を今年の春に卒業し、絵画を主に制作しています。

絵を描き始めたきっかけを聞かせください。

幼い頃から母の影響で美術館やギャラリーによく足を運んでいたということもあり、自然な流れで絵を描いていました。大学院でより深く絵画を学ぶ中で、単に何かを描くということだけではなく、「なぜ描くのか」「絵画とは何か」ということを考えるようになったと感じています。

受験期や大学の学部時代は、絵画を自分の中のイメージを再現するための手段として捉えていましたが、現在は自身の身体や時間との関係を確かめる行為として捉えながら制作しています。

影響を受けたアーティストや作品を教えてください。

小さい頃はモネやカンディンスキー、クレー、工藤哲巳、白髪一雄、松永定正を好んで鑑賞していました。現在は加えて岡﨑乾二郎、ライアン・ガンダー、クリスチャン・ボルタンスキー、イヴ・クライン、サイ・トゥオンブリーから影響を受けていると感じます。

特定の作品を意識しているというより、それぞれの作家が扱っている「時間」「身体」「痕跡」「不在」といった要素に影響を受けているイメージです。

「反復と変奏」── 絵画に宿る音楽的な循環

作品で表現しているものは何ですか?

現在の大きなテーマとして、「絵画に時間を内包することは可能か」ということを挙げています。

これは影響を受けた作品にも繋がるのですが、幼い頃からピアノとクラシックバレエを習っていた経験や母の影響もあり、クラシック音楽を身近に聴きながら育ちました。特にJ.S.バッハの『ゴルトベルク変奏曲』は、その中でもかなり聴き込んでいたと思います。「反復と変奏」という、この曲のもつ循環的な要素を絵画に落とし込もうと試みています。

現在のスタイルはどのように築き上げられたのですか?

最初から現在のような制作をしていたわけではなく、描き続ける中で、自分が無意識に同じ動作を繰り返していることや、色を混ぜ続ける行為そのものに集中していることに気付きました。

その感覚を何度も観察し続けた結果、現在の制作方法へ発展したと考えています。

痕跡とズレの蓄積

ギャラリーにかいで開催する個展のコンセプトを教えてください。

今回の展示では、制作の中で繰り返される身体の運動や、その中で生じるズレ、そしてその手が止まる瞬間に着目しながら、「絵画に時間を内包することは可能か」というテーマのもと制作した新作を展示させていただきます。

作品を通して、時間が一点の終わりに向かって流れていくものではなく、画面の中に留まりながらも、さらに循環して外に続いていくものだと感じてもらえればと考えています。

今回の個展では、どんな作品が展示されますか?

J.S.バッハの『ゴルトベルク変奏曲』の音楽的構造をもとに制作した絵画を展示します。完成されたイメージを提示するというよりも、描く行為の痕跡や、絵の具を混ぜる際に生じるズレの蓄積によって、時間そのものが定着しているような作品です。

アーティストとして活動するモチベーションを教えてください。

制作を通して、自分自身でも認識していなかった感覚や時間を発見できることです。

作品をつくることは明確な答えを出すことではなく、問い続けることだと考えています。だからこそ、これからも制作を続けていこうと思います。

戸上さんにとって、表現とは?

私にとっての表現とは、自分自身と世界との関係を確かめ続ける行為と捉えています。自身の時間を身体を通して画面の中に残していく、ある種儀式のように感じています。

そして、その時間を留めた「作品」として他者の前に開かれたとき、また新たな時間が生まれる。そこに表現の面白さを感じています。

戸上真音個展「Nachklang」


会期:2026年7月15日(水)~7月29日(水)10:00~18:00
※休廊日:7月19日(日)、20日(月)、26日(日)、27日(月)
入場無料
戸上真音 Instagram:https://www.instagram.com/mooo.mao.ooom/