<アーティストステートメント>
窓ガラスやショーウィンドウに反射する景色をモチーフにして、
身体との距離や他者との関係性について考えている。
ガラスに映る身体の輪郭は、自分の形をしているが自分の身体感覚がそこにあるわけではない。
自分でもあり他人でもあるような、ふれられない身体の輪郭が、街の景色と重なり溶け込んでいる。
私たちの身体や振る舞いは、日々言葉によって属性に当てはめられていく。
しかし、言葉に当てはめようとするなかで切り捨ててしまうような、言葉にならなかった部分こそが、自分にとって必要な形だったのではないかとも思う。
曖昧なままでいられるかたち、ふれられない身体にふれるような瞬間。
その輪郭にふれようとするように、絵を描いている。―― うえだあやみ
2026年9月26日から、Feel Records 京都はなれ店「ギャラリーにかい」にて開催される、うえだあやみ個展『透ける輪郭、まぶしさ』。当展示の開催にあたり、アーティストのバックグラウンドや個展の見どころについてお話を伺いました。
言葉を飛び越えた人との関わり
自己紹介をお願いします。
うえだあやみです。成安造形大学で洋画を学び、卒業してからも作品制作をして活動しています。
絵を描き始めたきっかけを聞かせください。
子供のころから絵を描くのが好きで、小学校、中学校とイラストを描いていて、そのまま美術の高校に進学しました。高校では絵を描けることが当たり前の環境になり、自分よりも絵が上手い人がたくさんいるなかで、私はなぜ描きたいんだろうと考えたこともあります。
そんななかであまり話したことのない他クラスの人から作品の感想をもらったときに、その人となりを知らなくても、自分の描いた世界が誰かに響くことがすごく嬉しくて面白く感じました。言葉を飛び越えた人との関わりができることが面白くて、私は絵を描きたいのかな、と思いました。
影響を受けたアーティストや作品を教えてください。
大学2年生のころに『死んでしまう系のぼくらに』を読んで最果タヒさんを知りました。『かわいいだけじゃない私たちの、かわいいだけの平凡。』のあとがきが特に好きで、こういう作品が描きたいなと、思っています。
関係性に名前を与える前の、何とも呼べないけれど、その人同士でしか生まれない繋がりの話。歳を重ねるにつれて、曖昧な関係性に名前をつけないまま過ごすことは思った以上に難しくてパワーのいることだなと思いますが、大切にしていきたいと思わされます。

作品で表現しているものは何ですか?
私は、自分で撮影した写真をモチーフにして、風景を再現するのではなく、その場にいてそのとき見ていたことに、絵を描くことでもう一度ふれようと制作しています。
大きい画面の絵では格子状のグリッドを引き、グリッドごとに絵を描き進めることで、その日ごとの視線の動きを残したいです。モチーフ全てをはっきりと描くのではなく、描かずに形を見せるところをつくったり、一部分だけ描いたり、何かわかるようなわからないような形で留めておきたいです。
属性に捉われない曖昧なグラデーションの肯定
ギャラリーにかいで開催する個展のコンセプトを教えてください。
冒頭に載せていただいた文章がコンセプトになっているのですが、私は、街中を歩いていてガラスの窓やショーウィンドウに自分の姿が映りこむような瞬間をきっかけに制作しています。普段、自分の視界には自分の手足が映りますが、それがどういった全身像をして繋がっているか、その見た目にはどういった社会的な属性が付いてくるかということは深く考えません。
しかし、ガラスに反射した身体を見るとき、身長や動き、服装が他人のように客観的に見えてきて、社会の中では自分はこういう人として分類されるんだろうということを考えさせられます。
言葉で定義された属性は自分が生きやすくなるアイデンティティとなることもあれば、その属性らしく振る舞わなければいけないと、属性を基準に行動してしまうことも起こり得ます。その属性らしくないことをしてはいけないかのように考えてしまうこともあるかもしれません。
そうではなくもっと、それらしい部分もあればそうでない部分もある曖昧さのグラデーションを肯定していきたいです。その曖昧な(揺らぎつづける)身体の動きを、視線の跡としてどうにか描けないかと考えています。

今回の個展では、どんな作品が展示されますか?
今までの作品よりも、より淡く、眩しさの中を捉えるような作品を制作しているかもしれません。ピントが合わないような曖昧さではなく、形を探しながらも揺らぐような画面が作れたらと思って制作しています。絶賛制作中なので、無事に展示されるといいなと思っています。
うえださんにとって、表現とは?
社会や他人と関わっていくうえで必要な言語かもしれません。言葉だけでは伝わらないことを共有できるのが作品や芸術だと思うので、どういった形でもずっと続けられたらなと思います。

うえだあやみ
1995年、京都府生まれ。風景をモチーフに自身の身体や他者との関係性について絵を通して考えている。自分がかつてその場にいて目の前を見ていたことにもう一度ふれるように、視線のゆらぎや形の曖昧さを残しながら、軽い筆致を重ねるようにして描いている。
近年の展示・受賞歴
- 2026年|「向こう側のながめ、生活のてざわり」(芝田町画廊/大阪)
- 2026年|「Tracing Light」(YOD TOKYO/東京)
- 2025年|個展「反射と向こう側」(氵/京都)
- 2024年|個展「遠くのまばたき 目の前のながめ」(hitoto/大阪)
- 2024年|「風のあと、呼吸の輪郭」(KATSUYA SUSUKI GALLERY/東京)
- 2023年|個展「季節の変わり目、風のすきま」(氵/京部)
- 2023年|「FACE2023」※森谷佳永査員別賞受賞(SOMPO美術館/東京)
- 2023年|「植木鉢のある風限II」(ギャラリーモーニング/京都)
うえだあやみ Instagram:https://www.instagram.com/natsuno_hn/
うえだあやみ個展「透ける輪郭、まぶしさ」
会期:2026年9月26日(土)〜10月4日(日)
※休廊日:9月27日(日)〜29日(火)
10:00~18:00
入場無料